私が現在、副業として取り組んでいるアーティスト活動は、17年前に始めた“磁器絵付け”が出発点となっています。
趣味ではなく、プロになりたい、という夢を掲げてから、その技術を習得して作品を制作し続けるにあたり、大きな問題の一つは時間でした。

この記事では、私の現在の副業の原点となっているアーティストとしての技術を学んだドイツ短期留学について書きたいと思います。
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はじめに:時間のない会社員が夢を追う方法とは?
私は白磁に絵付けをすることを日本で習い始めてすぐに、「プロになりたい」、と思いました。
その当時の絵付けのお教室は、熟練の方で10年以上、少なくとも5年以上習っている方でないと難しいモチーフを描かせてもらえないようなところが多い印象でした。
(注意: お教室によります。私はドイツ行きを決心した後に、日本でも経験年数に関わらず、どんどん教えてくださる先生のお教室を見つけることができて移りました。今はもっとそういうお教室が増えているかもしれません。)
頻繁に通えたとしても毎週末のお教室に通えるのが精一杯。
私は、5年以上も待てない、、、
会社員として時間がない中、どうすれば最短で技術を習得できるのか?

プロフェッショナルな技術を限られた時間内で得るために私がとった方法は、
「最も自分が尊敬する一流のアーティストに短期集中で基礎からマンツーマンで習う」
「その後は習ったことをひたすら自分で練習する」
ということでした。
ドイツ短期留学のきっかけ:運命の出会い
習い始めて夢中になってから、絵付けに関していろいろな本を買って勉強していました。
買った本の中で、一人のペインターの作品に惹かれます。
ホビー絵付けの世界で最も有名なペインターの一人で、ドイツの名窯マイセンの元トップペインター、ウヴェ・ガイスラーさんという方でした。
本の情報から彼のホームページと連絡先を探し当て、メールを送ってみました。メールには、彼の作品のファンであり、是非習う機会があればお願いしたいと書きました。

お返事をいただけて、偶然にも、来週東京でセミナーを予定されており、その際にお会いできる機会をいただけることになったのです。
会社帰りに彼の滞在先のホテルロビーで会って、私の熱意を伝えました。
「一流のペインターに、基礎から応用まで、集中レッスンをマンツーマンで受けたい」と。
一年先まで世界各国のセミナーやレッスンで埋まっていた先生のスケジュールの中で唯一空いていたのが8月中の夏休み期間でした。
その時期はドイツにいたいので、ドイツに来てくれるのなら、集中レッスンをしても良い、という条件でした。
私はこの機会を逃してはいけない、と思い、そのオファーを受けることにしました。
決断:1ヶ月のレッスンを受けるために全てを注いだ

著名な先生であり、さらに通常はグループレッスンをしている先生を一人占めするのですから、レッスン代は通常の3倍以上、という感じでした。
これは貯金から捻出することで何とかなりました。
最大の壁は、会社員として1ヶ月の長期休暇を確保することでした。
一ヶ月の長期休暇の許可が出ない可能性も考え、会社を辞める覚悟で休暇申請しました。
結果的にはその時の職場に非常に恵まれていて、辞めることにはならなかったのでとても感謝しています。
出発する前まで、経験に関わらずどんどん教えてくださる新たなお教室に移り、基礎をしっかり学ぶことに集中しました。
ドイツへ飛ぶ前は仕事の引き継ぎも忙しく、帰宅が遅い日々が続いていましたが、睡眠時間が少ないこともその時は苦にもなりませんでした。
ドイツへ飛び立った飛行機の中では、いつ離陸したのかも気が付かないくらい熟睡していましたが、楽しみな気持ちと高揚感、緊張感に包まれていました。

レッスンの日々:1分も無駄にしないという覚悟
一ヶ月間、先生のアトリエへ平日毎日通いました。朝の9時から16時半くらいまで。
レッスンでは、デザインの描き方、構図の考え方、基礎の習得、良い絵付けの材料、最後の細やかな仕上げまで、全てを習いました。
個人レッスンということで、普段は許可されない撮影の許可もいただき、私は習ったことを一言も漏らしたくなくて、詳細に記録しました。

ホテルへ帰ってからも、道具を一緒に持ち帰って、夜は毎日その日の復習をしました。
ドイツ滞在の間は1分1秒でも無駄にしたくなくて、土日もホテルに籠って一日中練習していました。
8月はドイツでは日も長く良い季節です。
「観光する良い場所も沢山あるのだから、少しは外へ出なさい」、と先生に注意されましたが、そのような時間にその時は全く価値を感じませんでした。
土日に描いたものを翌週に見ていただくために練習、そして質問リストを用意して月曜日は臨みました。
実際に、今思い返しても、その時の時間の使い方に後悔は一切ありません。
レッスン後:自分のスタイルを見つけていく道のり
日本に帰ってからは、撮影したビデオと自分のメモを何回も見直しながら練習しました。
最初はとにかく、先生のお手本に近づけるような技術を身につけることに集中。
レッスン中に習ったモチーフ以外にも後で自分一人で他のものを描く時に応用が効くような絵柄を教えていただいたので、その後新しいものを描く時にもレッスンで習得したことで描けることに感動していました。
同時に、先生の作品を真似したような作品から、自分独自のスタイルをもっと描いていきたい欲望が出てきて、どうすれば抜け出せるだろう、と悩むようにもなりました。
とにかく量を描こう、と思い、自分専用の電気釜(絵付けは専用の釜が必要です)も買い、週末や連休の時は描くことに夢中になっていました。
描けば描くほど、制作したいものがどんどん増えて、やがて、自分独自のデザインで描いた作品をブランドとして出してみたい、という夢にさらに繋がっていきました。
17年という時の中で、土日出勤もあるほど仕事が多忙な時期があったり、海外赴任の経験などで、5年くらい全く絵付けができなかった時期があります。
それでも、2013年に日本で最初の個展を開くことができたところから始まり、少しずつ自分の作品を制作してきました。
振り返って :「いつでもできる」はない
今考えると、その当時は貯金を叩いた高額なレッスン代も、学べた内容と短期で得られた技術を考えると、他に変えることのできない機会であり、レッスン代は今はもう安く思えるほどです。
その時に習った先生は、実はドイツでレッスンを受けた同じ年の11月にまだ51歳というお歳で旅先で容体が悪くなり、急死されてしまいました。
ドイツでお会いしていた時はお元気だったので、まさかその三ヶ月後に亡くなられた時は信じられませんでした。

あのときの決断がなければ、一生後悔していたかもしれません。
出会える人も、機会も、その時を逃せばもう二度とない。
それを私は、あの時に痛いほど知りました。
習い事は、週に1回や2回など、気分転換を目的としたり、ゆっくりしたペースで並びたいなど、人それぞれのペースや目的があるので、私のやり方は合わないケースが多いと思います。
ただ、夢中になれるものに遅まきながら出会い、プロフェッショナルになりたい、という目的があるのであれば、最短最速の方法が必要です。
さらに、会社員で平日は全く時間がない場合は尚更です。
副業でも本気になれば、時間がなくても、人生のターニングポイントを迎える一歩を踏み出せます。
この私の体験が、これからアートに挑戦される方の一つの参考になれば嬉しいです。
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