前回の記事では、新しいロゴをデザイナーさんに作っていただいたプロセスについてご紹介しました。
新しいロゴマークが完成した時、デザイナーさんが表現してくれた理想のシンボルを前に、
私は心から嬉しくなると同時に、「これは絶対に守らなければならない」と強く思いました。
なぜ、そこまで慎重になったのか?
それは、かつて自分が立ち上げた大切なブランド名とコンセプトが、国内のある大手企業の新しいブランドとしてそのまま使われているのを知り、顔から血の気が引くほどのショックと、無力感を味わった苦い経験があるからです。
その時に相談に乗っていただいた弁理士さんには、私の絶望ぶりに同情する言葉をいただくと共に、
「商標の世界は早い者勝ち。コピーされるなどはザラにある話です。 商標申請する前にホームページで公開してしまったご自身も認識が甘かった」
という厳しいお言葉もいただきました。

この痛い教訓と、新しいロゴは守りたいという強い想いがあったので、
商標申請ができるまで、今回は全てのメディアでの公開を待ちました。
本記事では、私が実際に行った商標登録の具体的なプロセスと、
海外進出を見据えた知財の守り方について、すべてお話しします。
個人やスモールブランドは資金が限られている中で、商標登録は大きな出費の一つではありますが、
自分のブランドを守る手段として必要なものです。
安心して国外進出するためにも、この記事が参考になれば幸いです。
Contents
🛡️ 個人・副業アーティストこそ商標登録が必要な3つの理由
「商標登録は、名が知れている有名ブランドがやるもの」
かつての私はそう考えていました。
自分のウェブサイトで公開していても、
名もない自分が誰かの目に留まることなんてそうそうないし、
目に留まってもそれが良いと思ってくれてもまさかそのまま自分のアイデアとして使われてしまうなんて思いもしていませんでした。
そんな甘い考えは、痛い失敗を経て、完全に誤りだったと初めて気づきました。
限られた資金と時間で活動する私たち、個人やスモールブランドこそ、「守り」の戦略を最優先すべきです。
1. 最大のリスク:無力な状態で「戦う」コストを回避する
もしあなたのブランド名やロゴが模倣された場合、あなたは「戦う」か「諦める」かの二択を迫られます。

私が過去に経験したように、相手が大手企業だった場合、たとえ勝てる見込みがあっても、
弁護士費用、訴訟にかかる膨大な時間と精神的なエネルギーは、私たち個人が活動を継続する上で致命傷になりかねません。
商標登録は、この「戦うコスト」をかけることなく、法的に自分を守る最高の防具となります。
2. 海外進出の生命線:国境を越えた模倣から身を守る
特に海外進出を目指す場合、商標登録はより広範囲でのリスクから自分を守る防御策となります。
海外の展示会で注目され、バイヤーやメディアに紹介されればされるほど、模倣品リスクは高まります。
国内で登録していても、海外では無効です。
活動の舞台を世界に移すなら、狙うマーケットでの防御も大事な生命線になります。
3. ブランドの成長:投資と協業を安心に変える
ブランドが成長し、将来的により大きなブランドとの協業(コラボレーション)や、投資の機会を得る可能性が出てきたとき、商標登録は「ブランドの信頼性」を示す証明書にもなります。
知的財産権が明確になっていることは、ビジネスパートナーにとってもリスクがないことを意味します。

次のステージへ進むための「安心材料」となる重要なステップです。
💰 実践プロセスと費用感:自分でやる?オンラインサービスを使う?
商標登録と聞くと、まず「弁理士への依頼」を思い浮かべ、その費用に尻込みする方も多いでしょう。時間と資金が限られた個人・スモールブランドにとって、ここは非常に重要な判断ポイントです。
自分でやるという選択肢はあり?
結論から言えば、日本の商標出願は「自分でも調べれば可能」であり、費用を抑えるために、時間と労力をかけて自分で進めるのも一つの選択肢です。
特許庁に電話で質問すれば、丁寧に教えてくれるという情報もあります。
海外在住者の場合
ただし、自分で商標出願ができるのは「日本国内に住所や居所がある方」に限られます。
私のような海外在住者が日本の商標出願を行う場合、法的な要件として日本国内に住所を持つ弁理士を代理人として選任することが必須となります。
そのため、私の場合は弁理士を通じた申請は、必須のプロセスとなりました。
私がCotobox(コトボックス)を選んだ理由
弁理士への依頼が必須となる中で、私が選んだのはオンライン商標登録サービスのCotoboxでした。
一番の理由は、オンラインでの弁理士さんとの相談も含めて、海外からもアクセス、手続きを進めやすいと感じたからです。
一般的な弁理士事務所と比較し、料金のシミュレーションが最初に明確にできる点も良く、
全体的に少しだけ割安な印象もありました。
Cotoboxでの実践プロセスと「こちらから動く」重要性
実際の流れは、まず事務担当の方と基本的なやり取り(出願人名義などの確認)があり、その後、弁理士さんとのやり取りに移ります。
- 区分と指定商品の確認: 弁理士さんと、出願したい商標がどの区分(クラス)に該当し、その中のどの指定商品・役務で守るかを詰めていきます。
- 出願書類の作成と迅速な対応: Cotoboxはオンラインサービスという特性上、出願書類の作成や返信は非常に迅速でした。しかし、この「スピード」があるからこそ、依頼する側も積極的に関わることが重要だと感じました。
正直なところ、オンラインサービスは効率化を追求しているため、こちらから質問を投げかけないと、最短ルートで事務作業を終わらせてしまう側面があると感じたからです。
私の場合、当初のドラフトでは自分が想定していた区分から変更になったり、指定商品の文言を細かく調整したりと、何回か変更を依頼しました。
万が一、大事な区分が漏れていては、せっかくのロゴを守ることができなくなります。
【重要】失敗しないための私の「確認作業」

そこで、私は以下の特許庁のデータベースを使い、自分自身で徹底的に下調べを行いました。
- J-PlatPat(特許情報プラットフォーム):https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
- 商標→商標・役務名検索で、自分の商品に該当するキーワードや区分で検索し、特許庁が実際に使用している商品・役務名をチェックしました。
この公式の名称を使い、私の方から弁理士さんに区分ごとに商品・役務名の下書きリストを作成し、チェックしていただきました。
弁理士さんは質問した内容には回答してくださるので、自分で納得のいくまで積極的に疑問点をクリアにしてから、最終承認を出すことが、後悔しないための最大のポイントです。
🌏 グローバル展開を見据えて:国境を越えた知財の守り方

海外進出を目指すなら、商標登録は日本国内だけで完結する話ではありません。
日本で登録されていても、海外では無効です。
私の場合は、日本市場だけでなく国際的にブランドを展開していくことを目指しているため、今回の新しいロゴでは、日本以外にもグローバルに商標登録を出願しました。
申請した国や地域の詳細についてはここでは言及しませんが、
国際的な出願プロセスを通じて、私が経験で学んだポイントをいくつかシェアしたいと思います。
1. 国によって異なる「区分の解釈と指定商品の要否」
商標の区分(クラス)はグローバルで統一されているユニバーサルな分類(ニース分類)ですが、
その分類内の「指定商品・役務」の解釈や、どこまで登録が必須とされるかは、国や地域の特許庁によって異なります。
例えば、ある国では「念のため広い範囲を申請しておいた方が良い」とされる区分でも、別の国では「その指定商品はあなたのビジネスと関係がない」として登録を拒否されたり、最初から不要と判断されるケースがあるのです。
同じサービスを展開していたとして、その区分の解釈が異なり、ある国や地域では必要な区分が、他では不必要な場合もあります。
2. 費用効率を重視するなら「現地の事務所」が最善
国際出願のルートとして、国際事務局(WIPO)を通じて一括で申請するマドリッド・プロトコル(マドプロ)という仕組みがあります。
私も最初に検討しましたが、最終的には「各国の現地事務所(オンラインサービス含む)」を通じて個別に出願する方が良いと判断しました。
その最大の理由は、費用対効果とクオリティへの安心感です。
見積もりを比較した結果、マドプロ経由で出願するよりも、現地の事務所に直接依頼する方が費用が半分近くに抑えられるケースがありました。
さらに重要なのは、現地の法律や事情に疎い中間業者を介さずに、その国の制度に精通した弁理士と直接やり取りできる点です。
この直接のやり取りにより、確認事項がスムーズかつ確実に進められ、結果的に出願のクオリティに対する安心感が得られました。
もし言語に抵抗がなければ、現地のオンライン事務所に依頼するのが、資金が限られた個人ブランドにとって最も効率的かつ経済的な方法だと強くお勧めします。
3. 資金・時間のバランスを考慮した「戦略的な選択」

商標出願は、海外も含めて広く行おうとすると費用も時間もかかります。
そのため、資金が限られた個人ブランドは、すべての活動国で同時に申請するのは現実的ではありません。
今すぐのマーケットだけでなく、今後5年以内に本格的に展開したい国・地域に絞って、戦略的に防御を固める必要があります。
この段階では、「どの国に」「どの区分を」出すべきか、長期的なビジネス戦略に基づいた判断をすることが、無駄な出費を避けるための最も重要な投資になります。
この段階では、「どの国に」「どの区分を」出すべきか、長期的なビジネス戦略に基づいた判断をすることが、無駄な出費を避けるための最も重要な投資になります。
✍️ 結論
🚀 「守り」を固めて、世界への「攻め」の土台を作る
商標登録という地道な「守り」の作業は、手間や費用を考えると後回しにしたくなるかもしれません。
しかし、私たち個人アーティストやスモールブランドにとって、それは「保険」であり、「世界に挑むための土台」の一つとも言えると思います。
私はかつて、無知と認識の甘さから大切なブランド名を失う痛手を負いました。あの時の無力感や、戦うことを諦めざるを得なかった悔しさは、二度と味わいたくありません。
新しいロゴを、そしてあなたの情熱と時間を注いだ作品を守るために必要な投資の一つです。
商標登録を考えていた方、これから新しいロゴを制作する方、または海外進出を考えている方が、
この記事を読んで、次の積極的な「守り」一歩を踏み出すきっかけとなれば嬉しいです。
最後に
前回、ロゴについての記事を多くの方に読んでいただき、本当にありがとうございました。
もっとこのような内容について知りたい、または詳細についてシェアして欲しい、などのリクエストがありましたらぜひお気軽にご連絡ください。
Naviact YK では、通訳も含めた海外展示会出展のサポートやコンサルティングを行っています。お気軽にお問い合わせください。


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