教えることは自分のためになる?アーティストの教室運営体験

副業アーティスト

アーティストとして活動をしていると、副業でも本業でも、制作に集中できる時間は貴重です。

その中でさらに、お教室を運営していくとなれば、

限りある時間の中で、「教えること」と「自分の制作」をどう両立するか、悩まれる方も多いのではないでしょうか。

アトリエの様子から

私自身、ドイツに来てから月に一回のペースで絵付けのお教室を開いていた時期がありました。

はじまりはご縁から。「絵付けを体験してみたい」という声をいただいたのがきっかけでした。

最初は、制作に集中したい気持ちもあり、教えることが自分にとってどんな意味があるのか、迷いもありました。

それでも、お教室の経験はアーティスト活動にも思いがけず多くの良い影響を与えてくれました。

この記事では、そんな私の体験をもとに、お教室運営がアーティスト活動にどのように活かされたかをお伝えします。


こんな方におすすめの内容です:

  • お教室を開いてみたいけど迷っている方
  • 副業でアート活動をしている方
  • 教えることに苦手意識がある方

私の今のアート活動の原点となった短期留学の話や、国際見本市参加の話は他のブログでご紹介しております。

教える立場で得られた3つの気づき

教える立場で得られる、プロとしての新たな視点
人に教える立場になることで、自分自身の基礎やプロセスを見直す機会になったり、相手に伝える工夫が求められたりと、作品を届けるだけとはまた違った“プロ意識”が自然と身につきました。

自分のスキルとプロセスの再整理

教えるためには手順を分解し、相手に分かりやすく伝える必要があります。

生徒さんももちろん人それぞれ。一人一人のレベルに合った、また目的にあった説明方法が求められます。
初心者の方、経験者の方、趣味で楽しくやりたい方、プロを目指している方、など様々です。
その場合、どこまで追求することが目的かを把握してこちらでも教え方を工夫しなければいけません。


その過程で、自分自身のプロセスや基礎知識を再度整理するきっかけになったと思います。

生徒さんからの刺激と学び

時に、私がまだ描いたことのないモチーフのリクエストをいただいたりして、学びになったことがあります。

自分自身で事前に描いてみて描きやすい手順を考えてみたり、その前のストロークの練習を生徒さんの為に考えてみたり、などの工夫をしました。

自分では想定しなかったモチーフのリクエストは、注文品と同様にとても挑戦しがいがあります。

お教室の運営を通じた段取り力

これは事務的なことも含めてですが、一人で作品を作る時と一転変わって、お教室中はマルチタスクになります。

私は元来、マルチタスクが得意ではありません。
(最近の研究で、本来人間はみんなマルチタスクに向いていない、と言われているみたいですが、、)

そんな自分を見越して、前日の夜は参加する方のことを考えて、事前準備をしていました。
お道具の準備、休憩のお茶の用意、などなど。

こういうことは、経験していくことで色々なことに気づけるようにもなりますし、得意にはならなくても、自然と鍛えられてやれるようになります。

アートの魅力を広げる小さなきっかけに

これは、一番お伝えしたいことです。

「技術や経験が必要なこと、いかに手間がかかっているかなど、手描きの良さを知るきっかけになった」

お教室をやっていてとても嬉しかったフィードバックの一つです。

絵付けの様子から


私は磁器への絵付けをやっているのですが、今はプリントものの安価な食器や磁器の物が多いです。

全て手描きで絵付けされたものは少なく、その認知度はとても低いです。
凝った絵付けは手間がとてもかかりますし、良い磁器、材料を使ったものは原材料だけでも高価なものになります。


お教室で実際に自分で絵付けをする、釜で何回か焼成を繰り返す、という経験をすることによって、下記のようなお声を生徒さんたちよりいただきました。

「美しく描くことはこんなにも難しく、手間がかかっていることが分かった」

「こんなに大変だと思わなかった、値段の理由がわかった」

「習ったことをきっかけに、手描きとプリント物を区別できるようになった」

「もうプリントの器は買わなくなった」

「これからは手描きのものや作家物しか買わない」


これらは、そのアートの魅力や認知度を広げる、という意味で私にとってとても嬉しい予期せぬフィードバックでした。


生徒さんとの出会いとコミュニケーション

最後に、色々な生徒さんが学びや体験に来てくれて、和気藹々とおしゃべりしながら過ごしたお教室の時間は今でも楽しい思い出です。


お教室の後はお茶の休憩タイムだったのですが、季節のお菓子を焼いたりして、それを毎回考えるのが楽しみの一つでもありました。

生徒さんもいつも素敵な差し入れを持ってきてくださり、お話するティータイムは楽しくて、毎回レッスン時間より長くなっていました。

お教室の後のティータイムの写真


これはアーティストとしてのみのメリットではないかもしれませんが、お教室をしていなければ出会えなかった、交流できなかった方達との出会いは貴重です。

おまけ : 会社員経験が副業にも活かせた話


実は私自身、教えることは昔から得意だったわけではありません。

私は、元々人前で話すことが得意ではなく、人に教えたり、お教室をやるなんて、前は考えたりもしませんでした。

でも、お教室をやって欲しいと言われた時点で、あまり躊躇なくできた理由は、会社員としての経験でした。

私は、会社で講師としていくつかトレーニングを担当していた時期があります。その時は大きな会議室で20人くらいを相手に、時に丸2日というプログラムで話し続け、他の社員を教える、という経験をしました。

最初は緊張しましたが、何回もやっていくうちに慣れてしまい、教える楽しさややりがいをそこで覚えることができました。
なので、絵付けのお教室を開く時は、精神面という意味ではリラックスして臨むことができました。

会社員としての経験が、アーティストとしての活動に繋がった一つの例ですが、こういうポイントはいくつかあります。(また別の記事でご紹介したいと思います。)

副業でアーティストとして活動されている方にとっては、本業との両立は難しい課題ですが、少し励みになる例になれば嬉しいです。


まとめ

以上、私が過去のお教室運営から感じたこと、得られたことをまとめました。

もし時間があって、できる環境があるのであれば、月に一回や年何回かの単発でも良いのでお教室という経験をしてみるのも、アーティストとしての幅が広がる一つの方法かもしれません。

お教室を開くことは、ただ「教える」だけでなく、自分のアートを深く理解し、届ける手段のひとつでもあります。


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